小 春 日 和

だめなひとの雑記帳

夏の風物詩

「実家、帰らないんですか?」

これを聞くたび、どうして普通の家庭のほうが普通なのかと問い質したくなる。普通なんてある訳もないと思っているくせに、全く滑稽な話だ。

恐らく最大級に愛してくれていたであろう父親は他界している今、私に親などいないし、実家も物理的にもないのだ。ほっといてくれよ、と思う。

一般的に母親という立場であろう人間は、いつも私の殻を見つけては粉々に砕き、満足そうに戻っていった。ふすまの部屋には鍵などなく、ものすごい足音を立てて階段をあがってくる音を聞いてはフラフープなどで鍵代わりに戸を塞いでみたのだが、そんなことはお構いなしに力任せに開け、詰め寄ってきて、いかに私がそいつを馬鹿にしているかという妄想をぶちまけて去っていく。手の1つでも出してくれれば応戦しようがあったものの、"かわいそうな人"に成り下がっているそいつに自ら手を上げられるほど優しい子ではなかった。勿論、原因は分からない。急にきて、急に去っていくのだ。初めて死にたいと思ったのは、小学校3年生の夏だったこともよく覚えている。それを目にしたそいつは、自分の立場に感傷的になり、泣いていた。情けなかった。とりあえず包丁は元に戻しておいた。その後のことは覚えていない。

アルバイトでお客に、「お父さんお母さん寂しいでしょう」と顔を見るたびに言ってくるおばさんがいた。ずけずけと入り込んでくるその人が、嫌いで仕方なかった。ある日、「私、実家もないし親もいないんですよ」と言ってみた。嘘は言っていない。大体合っているもの。以来、その人に聞かれたのは正月の1回だけである。勿論、その時に「やだ!私、実家ないって言ったじゃないですかぁ~」と五寸釘ぐらいの釘を刺しておいたからなのだが。客だったら店員に入り込んでも許されるのかと、本気で問いたかった。逆だと、あの店員…と苦情を入れるくせに。子供じみているとは思うけれど。

 

実家がないんですよーって気軽に言えるようになったらいいのに、と思う。

言った途端、あっ…というような表情をされる。(滅多に言わないけど)

勿論相手方にはこんな事情は分かるはずもないのだが、私にとってはすごく望んでいたことで、自然なことで、当たり前のことなのだ。

それにそんな表情をされる方が、悪いことをした気になる。

何が悪いのか。

 

子供の頃は何もわかっていなかったが、さぞかし異様な母子だっただろう。問題も起こした。でも、ちゃんとしていると思っていたそいつ。子供の帰宅時間に鍵も隠しておいてくれずにほっつきあるいて股開いてるようなやつの娘だから、私もこうなったんじゃないかと責任をなすりつけたくなる。どうにもできないのは分かっているけど、そうせずにはいられない。しないんだけど。

そいつは私が生まれてからずっと、今でも、女でしかなかった。身のまわりの女を排除するから、それを察知できたのかできなかったのか。私の口の悪さも、そこからきているだろう。直す直さない以前に、困ったことに、一種に表現になっている。いつになったら清算できるだろうか。