小春日和

だめなひとの雑記帳

しいたけの話

スーパーで値引きされていた椎茸を買った。値引きされていたのは3パックあったのだが、このパックだけ6つ入っていたので、迷わずカゴに入れたのである。他にも色々な食材を捕まえてカゴに入れ、レジ精算をし、いざ袋に入れてつれて帰ろうというところで、椎茸のうちの1つに緑色のカビが生えていることに気付いてしまったのである。

カビと言っても1cmほどの小さなもので、取り除いてしまえばきっと食べられないことはないし、普段なら持ち帰ってしまうだろう。それなのに今日は頭の中でぐるぐると会議をした結果、サービスカウンターに持ち込み、返品をしてしまった。

その会話の中で、3回は「すみません。」と言っただろうか。こういうのは別に、誰が悪いとかそういうものは一切ないと思っている。店員だって人間だし、野菜だって生き物だ。見落とすこともあれば、チェックが終わって暫くして気が向いてカビを生やしたのかもしれない。もちろん、そういうものを置くってのはどういうことなんだってクレームもあるだろうけど、それはその人の価値観で、別に正しくも間違ってもいないと思う。

ただ私は、せっかく誰かが大事に育てたしいたけを捨てられる前に拾いあげられたというのに、たった1cmのカビ1つでゴミ箱に送ってしまったということが、なんだかとてもしいたけに対して申し訳なかったのである。

だったら持ち帰ればよかった話なのだが、そうして何でもかんでも無頓着に持ち込んでしまうので、いい加減きちんとしようと思い始めたところで、このしいたけだったのだ。お互い、不運である。

 

返品を担当してくれたのは私が気に入っているおばちゃん店員だった。おばちゃんという表現がしっくりくるような外見をしていて、声はガラガラに枯れている。ちょっとだけ豪快なスナックのママみたいな感じかもしれない。その声でいつも、「ありがとうございまぁす!」と、後ろにハートがつきそうな可愛い喋り方をするのだ。いつも夜にいて、レジのときも商品を丁寧に扱いつつ、早くさばいてくれる。もし同じスーパーにいたなら、間違いなくなついていただろう。それくらい、ファンになってしまっている。

自分がそういう風に思うようになってから、過去、早朝に元気を売りにコンビニで接客をしていた頃にお菓子や野菜や花をくれたおじさん方は、もしかして同じように思っていたのだろうかと考えるようになった。時給の割に過剰サービスと仕事の多さ・責任感を求められる接客・販売は、もう二度とやりたくないけれど。